退職エントリ(暫定)

会社を辞めることにした。
辞めるとなった場合、しかるべきタイミングでその態度を示す必要がある。

 

例えばアイドルはステージの上にマイクを置いて舞台を去った。
野球選手は「我が巨人軍は永久に不滅です」と言い放った。
山田親太朗は「そういえば去年事務所もやめて芸能界もほぼ引退してます。今は友達と楽しくやっています 笑」とツイートした。

 

会社員のしかるべきタイミングは定例会議の後である。

「部長、少しお時間いいですか。」

少しだけならと、会議室(松)から会議室(茸)に移動し話はさっそく本題へと入る。

 

「我が社は永久に不滅です。今は友達と楽しくやっています」

そう言いながら社用携帯を床に置いたのだが意図は伝わらず、別日に面談が設けられることになった。

 

2度目の面談。
そこで改めて辞意を伝えると、
「お前を育ててきた第二の父親として、今このご時世で辞めて一人にさせることはできない。もし仕事がしんどいなら、3日間休みをやるから、それでリフレッシュしてこい」と言われた。

 

お言葉に甘えてサイパン島に出発した。
サイパン島は美しいサンゴ礁に囲まれた緑豊かな島だ。
到着したホテルの部屋にはアメニティとして絵葉書が数枚揃っていた。
絵葉書には水着姿でダンスする女性と青い海が写っている。
これ以上に語るものはあるまいと、俺はその女性の横に「退職届」とだけ書きガラスの瓶に詰めた。

 

海には明日流す予定だ。
この場合、退職日はサイパン時間か日本時間、どちらに合わせればいいのだろう
そんなことばかりが気になっている。