退職エントリ(暫定)

会社を辞めることにした。
辞めるとなった場合、しかるべきタイミングでその態度を示す必要がある。

 

例えばアイドルはステージの上にマイクを置いて舞台を去った。
野球選手は「我が巨人軍は永久に不滅です」と言い放った。
山田親太朗は「そういえば去年事務所もやめて芸能界もほぼ引退してます。今は友達と楽しくやっています 笑」とツイートした。

 

会社員のしかるべきタイミングは定例会議の後である。

「部長、少しお時間いいですか。」

少しだけならと、会議室(松)から会議室(茸)に移動し話はさっそく本題へと入る。

 

「我が社は永久に不滅です。今は友達と楽しくやっています」

そう言いながら社用携帯を床に置いたのだが意図は伝わらず、別日に面談が設けられることになった。

 

2度目の面談。
そこで改めて辞意を伝えると、
「お前を育ててきた第二の父親として、今このご時世で辞めて一人にさせることはできない。もし仕事がしんどいなら、3日間休みをやるから、それでリフレッシュしてこい」と言われた。

 

お言葉に甘えてサイパン島に出発した。
サイパン島は美しいサンゴ礁に囲まれた緑豊かな島だ。
到着したホテルの部屋にはアメニティとして絵葉書が数枚揃っていた。
絵葉書には水着姿でダンスする女性と青い海が写っている。
これ以上に語るものはあるまいと、俺はその女性の横に「退職届」とだけ書きガラスの瓶に詰めた。

 

海には明日流す予定だ。
この場合、退職日はサイパン時間か日本時間、どちらに合わせればいいのだろう
そんなことばかりが気になっている。

8月28日 免許更新にて

初めて、免許更新というものをする為に、新ノ口駅の運転免許センターへと向かった。
新ノ口駅なんてもう何年も使っていなかったので、すっかり勝手を忘れ、乗り換えを5度間違えながらもどうにか受付時間までに向かうことができた。

 

ところでその日の獅子座は12位。
Yahooの占いでは「わからないことや、できないことがあったら素直に人に聞くと良い」と書いてあった。ラッキーカラーは緑。ラッキーアイテムは「うどん」で、「みどたぬ(緑のたぬき)」を持っていれば万全なのかと安直な発想をしてしまう。

 

限定的な免許の名前を冠しているだけあって、やはりその施設の前には免許を取得しようとしている人と、免許を更新しようとしている人、はたまた返納しようとしている人が集まっていた。
これがふぐ調理師免許センターであれば、「絶対合格!ふぐ調理師免許マスター100」をもちながら緊張の面持ちで佇む人もいれば、一度毒入りのふぐを提供してしまったばかりに、これから受講する違反者講習を前に憂鬱な人もいるのだろう。

 

整理券を受け取り入場すると、係員が機械的な動作で用紙を配布し、そしてまた別の係員が機械的な口調で次の場所へ誘導を行った。向かった先の係員は電池切れのため、料金の支払いは普通の人間が行うことに。「ありがとうございます、次は3番の窓口へどうぞ」と案内してくれた。

 

視力検査・写真撮影を終えて講習の会場へと向かう。
会場に集まっているのは皆一度も事故や違反をおこさず、点数を守りきった所謂「優良運転者」。まだ講習自体は始まっていないが、皆背筋をピンと伸ばし、誇り高い表情をして開始までの時間を過ごしている。そういえば会場に向かう最中チラッと見えた違反者講習の会場は皆 机に足を乗せ、ある者はタバコを吸いながら、またある者は教壇の男にゴミを投げていた気がする。

 

講習が始まると早速DVDが流れ、近年改正された自動車に関する法律についての案内が流れる。
が、しかしDVDの音量が小さく、うまく聞き取ることができない。このままやりすごすか?いやただ私も優良運転者の端くれ、法律の改正については知っておく必要があるのではないか。そんな葛藤が生まれる。そこでふと、今朝見たyahoo占いの一文を思い出す。「わからないことや、できないことがあったら素直に人に聞くと良い」。私は恐る恐る教団の男に向かって「あの、すみません音量が・・・」


「よく聞こえないです」「ボリュームをあげてもらえますか」

驚くべきことに、私と同時に複数人が同じような要求を教壇の男にしてくれた。私はあげようとしていた右手を膝に戻し、教壇の男はああすみませんねとDVDの音量を上げた。
はっきりと聞き取れるようにはなったが法律の改正に関する内容は難しく、これは一度で理解できる人は相当少ないのでは、と思った。すると自分の疑問を代弁するかのように、「この法律はつまり軽自動車を2台同時に運転しないといけないということですか?」「レッドブルの使用本数は3本とのことですが、それぞれ何ミリリットルの缶ですか?」といった鋭い意見が飛び交った。


そこで気づく。そういえばこの免許更新は誕生日の前後1ヶ月以内に受けなければいけないもの、つまりーここに集まったほぼ全員は獅子座だということに。
そういえば心なしか、緑の服の人間や、うどんを食べている人間が多い。

 

結局優良運転者講習は大盛り上がり。違反者講習よりも長い時間の質問大会となり、うどんをおかわりする人もいた。
出口で無事ゴールド免許を受け取り、財布に入れようとすると黄色のタンクトップを男性が喋りかけてきた。
「どうですか?写真うまく撮れてましたか?免許証の写真ってねぇ、あんまり写りよくならないですよねぇ。あ、でもあなたよりはどうやら写りがよく撮れてそうだ。よかった、よかった。」

 

あいつは乙女座だと思う。

 

意味がわかると怖い話

       

 

          #1.サプライズ

 

A子、B子、C子の仲良し3人組はとあるレストランでご飯を食べていた。

 

他愛もない話であっという間に時間は過ぎ、

そろそろ帰ろうか、

という頃にフッと店内の電気が暗くなった。

 

ゴスペル調の音楽が流れ始める。

 

 

そう、この日はC子の誕生日だったのだ。

 

A子とB子は事前に店にお願いし、

サプライズを仕込んでいた。

 

テーブルにはロウソク付きのケーキが運ばれる。

 

「誕生日おめでとうC子!これは私たちからのプレゼント。これからもよろしくね!」

 

A子は入浴剤の詰め合わせが入ったギフトボックスをC子に渡した。

 

状況を察した周りのテーブルからも、祝福の拍手が聞こえる。

 

「愛されてるね~C子(笑)」とB子が茶化した。

 

C子はありがとう、と言いながらも、 どこか悲しい顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

↓解説↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C子はサプライズとかそういうノリが苦手だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

         #2.歌をうたう女

 

その女は、歌が上手だった。

 

会社の同僚たちとカラオケに行くたび、

皆が「うまい、うまい」とその歌声を褒めた。

 

 

女はだんだん自信がついてきた。

 

「私は歌が上手いんだわ。

もっと色んな人に聞いてもらいたいわ。」と思い、

 

公園で、子供達に歌を披露することにした。

 

 

曲目は

ぞうさん

森のくまさん

さんぽ

大きなくりの木の下で

 

 

の4曲だ。

 

 

童謡を歌うのは初めてだったが、

とても満足に歌うことができた。

 

 

気を大きくして

次の日、再び公園に向かったが

昨日きていた子供たちは誰もいなかった。

 

次の日も、また次の日も公園に足を運んだが

とうとう、その公園に子供たちは来なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

↓解説↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園で歌をうたう人はちょっとこわいってなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         #3.遊園地

 

 

娘はつい最近ひらがなが読めるようになり、

ある日子供向け雑誌で見た遊園地に興味を持ち、

自分を連れて行くよう何度も催促するようになった。

 

見かねた父親が、娘の5歳の誕生日に遊園地に連れて行った。

 

 

「ようこそ 楽しんでね」という看板をくぐり

ジェットコースター、メリーゴーランド、コーヒーカップを巡った。

 

 

しかし、遊園地にいる間、娘は終始暗い顔をしていた。

 

最後まで暗い顔のままで、結局パレードを見ずに帰ってしまった。

 

 

 

 

 

 

↓解説↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地は楽しませてくれるものと思っていたので

なんか「楽しんでね」って自分勝手だなぁと思った

考えすぎだとは、思うんだけどね

 

 

 

 

 

 

11/20 ジャイアント白田 ゴジラの巨像を素通り

タイトルと本文は関係なし。

 

11/20

その日は天理駅で取材。
天理というと・・・天理教という巨大な新興宗教があり、
天理駅はそのお膝元の駅なので、教徒がほぼ日常的に法被(天理教のユニフォーム)を着ながらそこらへんを歩いている。
ちなみに、教徒の数も多いので、法被ウォーキング姿や、宗教そのものが街に違和感なく馴染んでいる。


さて集合時間になり、取材メンバーであるライターとディレクターが揃ったので
そろそろ行きましょうか、となっていた矢先、
「お仕事ですか?」と声をかけられた。


声の方に振り向くと黄色いレーヨンの服に黄色い靴をお召しの50代くらいの女性。
遠くから見たら練りからしのチューブそのもの のような人である。


「そうです、仕事です」と答えると、我々の不思議そうな表情に気づき
「あ、ごめんなさいね〜、私、独り身で。こうやって人とおしゃべりするのが好きなの。」
と言われた。こうなると邪険に扱えず、話に付き合うことに。

 
「どんな仕事?」「何を取材するの?」「みなさんおいくつ?」

何回かの質問に答えた後、もう限界だと思い、


「これから仕事じゃなかったら、もう少しおしゃべりできたんですけど、すみません」


これで切り上げよう、という意図で言ったつもりだったが、
「あらこれから仕事だったの、もう終わってたかと思ってたわ〜」と彼女は驚いた。
我々の呆気にとられた表情を置き去りに、「じゃあ本題に入るんだけど」と、
カバンから三つ折りにしたチラシを人数分取り出した。本題まだやったんかい。


チラシには彼女が小指側面を黒くしながら手書きしたであろう
それっぽい教えが羅列してあった。そして右下には「ヒンドゥー教」の烙印が押されている。

 


ん?ヒンドゥー教天理教じゃなくて?

 


彼女は話を続ける。

「今って日本、すごい大変な状況じゃない?でもこの聖典は、この状況をどうやったら科学的に打破できるかが書いてある唯一の宗教書なの。で私が特に参考にしている文章がここに書いてあって・・・」

 


ふと思い返すと
「お仕事ですか?」はこの土地のものでない(天理教徒でない)ことの確認だったのだ。
そして、「私、独り身で。」で話をちゃんと聞かせようとする。
どアウェーで布教するために編み出した立派な生存戦略だ・・・。


とうとう最後まで邪険に扱うことはできないまま僕はヒンドゥー教に入信することにした。
教徒のみんなはやさしくて、僕が定期的に行われている礼拝にいくといつもお菓子をくれたりする。


でも、聖典の勉強をすればするほど、
宗教が危機的な状況を科学的に打破するなんて可能なのかな?と
疑問に思ってしまい・・・
思わず寺院の偉い人に聞いたところ、今度その部分についてセミナーを開いてくれることになりました!

 


このセミナーは教徒じゃなくても参加できるので、
もしよかったら皆さんも一緒に聖典について勉強しませんか?

知らないことに触れるって、意外と楽しいですよ。
宗教って、依存の対象じゃあないんです。
思考の軸を増やしてくれるんです。
自分が悩んだ時に、違う視点からアドバイスをくれるんです。
その結果成功して来た人がたくさんいるからこそ
宗教、つまり教えが何千年も続いているんです。

 

あ、セミナーの日にはインドの郷土料理も振舞われます。
紫色でたまにちょっと動きますが、美味しいですよ!
是非みんなできてくださいね。

架空しいたけ占い日記

「予想外の正解」のイエローが出ています。獅子座ってすごく「思いがけない出会いをした時は全て味わいつくす」という人が多いのですが、それが顕著に現れる時だと思います。例えば、「ピクルスを初めて食べたのはマクドナルドのハンバーガーではありません」という人や「潰れたコンビニの前で2週連続居眠りしているサラリーマン」など、そういう「小さな面白み」に出会う機会が今週は多くありそうです。だからって誰に触れ回るでもないのが、獅子座のちょっとした美徳でもあるのですが、今週はそれを少し捨ててみてもいいと思います。今はあえて口に出すことによって、突破口を開くことのできるタイミング。「あのね、さっきね、」と見たまま感じたままを誰かに話すといいかも。

 

・・・なんてことが雑誌に書いており、そういえば自分も、初めてピクルスを食べたのはマクドナルドのハンバーガーではないなと気づいた。なるほど見たまま感じたままを、と思いタクシーの運転手に話しかけようとした矢先、「え、そうなんだ」とタクシー運転手が一人つぶやいた。
カーナビを見ながら話していることから、ピクルスの話ではないとわかる。

 

目的地までの経路の話である。タクシーのカーナビは配車アプリと連携しており、あまり見たことのないメーカーだったが、性能は幾分か良さそうなものだった。そのカーナビが、目的地である実家までやや複雑なルートを指し示していた。
別に、遠回りというわけでもなさそうなので特に指摘はせずまた雑誌に目を落とした。運転手はどうやらそのナビのルートに従って運転しているようだった。

 

目的地である実家に到着して、しばらくワイドショーを見ているとニュースの速報が入り、現金輸送車が襲われる事件が発生、犯人は現金を奪って逃走中という情報が流れて来た。物騒な、と驚いたのもつかの間、事故現場の中継先は実家に向かう途中、ちょうど避けて通った道で起こっていた。なんと、まぁ。

事件のあった時間で、現金輸送車と犯人の車以外、車は通らなかったらしい。

 

母がキッチンから戻ってきたので、これは見たまま感じたままをと思った矢先、母が「あのな、さっきな、」と話しかけてきた。そういえば母も同じ星座である。

美容記事(美容室での会話 節分)

正月が終わるとグッと節分ムードが高まり、コンビニやロフト、スーパーなんかは節分仕様の売り場に変更されている。街中に流れる節分ソングにベージュ色のイルミネーション(豆球)…俺はこの時期がとても好きだ。

ここ1週間は朝の情報番組は節分の話題で持ちきりで、もう今更って話だが、節分グッズも進化している。

豆まきをハンディでやるのはもう時代遅れ。バズーカ式のそれに豆を詰め、ボタンを押すと一気に豆が放出される。つい先日Youtuberがこれを国会議事堂に向けるなどして炎上していたが、使い方さえ間違えなければ短時間で鬼を外にやることができるので便利だと思う。

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perfumeは20代にやりたいことは全部やった、30代の扉をバーンと開けたい、とインタビューで答えていたがこの言葉の裏には(でも節分の時、年の数だけ豆を食べるのは億劫だ)という本音が見え隠れしていたことは言うまでもない。
だが実はこの悩みは解決することができる。炊飯器サイズの容器に豆をあらかじめ入れておき、自分の年齢を入力するとその分の豆が出てくる機械が発売されたのだ。
1台5400円(税別)。毎年の煩雑さを思えば買っておいて損はない。

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豆屋はここぞとばかりに限定商品の販売を行っている。特に毎年注目度が高いのが岐阜県各務原市の豆屋「榊原(さかきばら)商店」の節分豆である。毎年2月3日に収穫された豆を1年間神社に保管し、祈祷を行ったのちに出荷されるこだわりの逸品だ。
通販は行っておらず、毎年発売日にはこの商品を求めて全国各地から榊原商店の開店前に列をなす。iPhoneの初売りなんかを想像していると自分の甘さに驚かされることになる。

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ところで初売りといえば仙台の初売りをご存知だろうか。初売りといえば通常より安かったり、福袋と称してお買い得な商品がまとめて入ったり…とはいうものの、もうそういうのに期待せずぬくぬくと正月を過ごしてる人も多いのではないだろうか?

仙台の初売りは一味違う。豪華な商品などをつける販売方法は「景品法」という法律で規制されているのだが、「仙台初売り」だけは、豪華な景品をつけてもよい、と公正取引委員会にも認められているのだ。
ここらへんはWikipediaにもまとめられている。

この話、節分の話は丸々嘘で、初売りの話は本当である。
美容室の担当の人にこの話をしたら、前半の嘘臭さも相まって初売りの話は本当だと力説してもめちゃくちゃ疑われた。近くで話を聞いていたアシスタントの子には、そのうち顧客情報の欄に「話は半信半疑で聞け」て書かれますよ、と言われた。
あ、これは本当です。


2018年10月14日、鍵のおはなし

‪アメ村、まんだらけの横でボーッとしていると明らかに困ってそうな女性を見つけた。

‪無法地帯になっている駐輪スペース。女性は白い自転車の回りで右往左往。‬
‪あぁ、と瞬時に理由を察し、「あの、足元に鍵落ちてますよ」と言った。‬
‪しかし女性の表情は変わらず、‬
‪「これ、私のじゃないんですよ」と。‬
 
 
‪話を聞くと、この白い自転車は間違いなく自分のものだそうだ(その自転車には彼女のマンション専用のシールが貼ってあった)。‬
‪しかし、自分の持っている自転車の鍵を何度差し込んでもロックを解除できないのだ、と。‬
‪長い間使っているからだろうか、鍵がうまくかみ合わないのかと思い何度か試してみたがロックは解除できない。‬
 
‪さらに、なにより奇妙なのが、‬
‪その自転車の脇には明らかに自分のものではないキーケースがあり(冒頭で落ちてますよ、と指摘した鍵だ)、それを差し込むとガチャン、とロックが解除できてしまうのだ。‬
 
‪そのキーケースには無骨なシルバープレートが付いているだけだが、彼女の趣味嗜好に合わないものというのは分かる。彼女はシルバープレートというよりシルバニアファミリーみたいな格好だった。‬
 
‪ミナミのど真ん中で、1人何度も開かない自転車のロックをガチャガチャするのは気が引けていたのか、僕が現れてからは何度も自分の鍵を自転車に出し入れしていた。尚ロックは解除できず。‬
 
 
‪一通り話を聞いたのち、特に気が利いたことも言えなかったので「気持ち悪いですねぇ」と総括した。‬
‪「ですよね」との同調ののち、変な空気が数秒流れ、僕はもう、その持ち主不明の鍵を使うしかないのでは、と伝えた。‬
‪「えー…」やや躊躇いの表情。「でもそれしかないですよ」「まぁそうですよね、気持ち悪いなぁ」‬
 
‪彼女はシルバープレート付キーケースから鍵を取り外し、自転車に乗って帰っていった。
 
話はこれでお終い。一連の出来事に、自分も居心地が悪くなってスタンダードブックストアに移動した。
 
以下は推測。
 
彼女が多重人格である、完全に類似した自転車がもう一つあった、エトセトラ。
色々考えた中で現実味があったのは、彼女にはストーカーがいたのではないかということだ。
 
 
リング錠を外し新しいものをつけるまでは、最短10分で出来るという。
自転車のリング錠を壊し、新しいものをつける。そうすると既存の鍵は使えなくなり、新しい鍵のみが使用できる状態になる。
時間的には可能性があるが、都合よく同じタイプのリング状を持っている可能性は低い。あとリング錠もタダではないし、自転車を使えなくするいたずらなら、わざわざ鍵を置いて逃げるようなマネはしない。
 
でもストーカーであれば。
同じタイプのリング錠をリサーチして購入した可能性がある。
&、ストーカーは彼女の自転車の鍵を必然的に手に入れることもできる。
 
 
となると、
僕はもう、その持ち主不明の鍵を使うしかないのでは、と伝えた。‬
‪「えー…」やや躊躇いの表情。「でもそれしかないですよ」「まぁそうですよね、気持ち悪いなぁ」‬
この展開は、ストーカーが望んだ展開そのものだったのではないだろうか。
 
 
以上、先輩にこの話をしたら「プチ世にも奇妙なですね」、と言われたので、
プチ世にも奇妙なでございました。
 
今後、この話が面白くなるか、或いはもっと気持ち悪くなっているかは、
僕の手にある自転車の鍵にかかっているかもしれません。
 
と、いう嘘オチ。